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2022年10月 1日 (土)

【池上鐘音】ヤマトの沖縄

▼時計代わりとも言われるNHK連続テレビ小説、いわゆる朝ドラは定時の視聴習慣を持つ人に支えられているのが実態だろう。よく視聴率の高低を作品の評価と結び付けて語られるが、どの作品も週間ランキングのトップクラスを維持している▼朝ドラのファンには、視聴しないという選択肢はない。しかし忙しい家事や出掛ける準備の合間に見ている派と、質の高いドラマを毎日じっくり味わいたい派の二極分化が近年激しくなっているように思える▼東京制作の2022年度前期『ちむどんどん』が終了した。沖縄返還50周年に、しかも比較的注目されることの少ない山原(やんばる)地区が舞台になるというので個人的にも楽しみにしていた。果たして子役たちが登場する最初の2週は、戦後の貧困と家族愛、さとうきび畑の上空を切り裂く米軍機の音、親たちの戦争体験、とりわけ父親が中国大陸での加害経験を抱えているであろうことなど、期待は高まるばかりだった▼端々の違和感が決定的となったのは、その父親がほとんど唐突に死んでしまってからだ。あまりにも安直だなと思っていたら、特にヒロインに替わってからは素人目にも整合性の十分取れていない展開や不自然なせりふが目立つようになってきた▼短文投稿サイト「ツイッター」での酷評が大きな話題となったのも、今作の特徴だ。それも二極分化したファンのうち、後者からの集中砲火だったろう。しかし前者にとっては、整合性など問題にならない。途中飛ばしても何となくいい話が並んでいれば、十分成立する。それが朝ドラの必要条件なのかもしれない▼たとえ節目の年であっても、基地問題ひとつ解決の見通しは立っていない。「沖縄に寄り添う」と言いながら実際には冷淡な態度しか取らないのが、薩摩支配から変わらないヤマト(琉球=沖縄に対する日本)の基本的姿勢であったろう。当作にも、苦難の歴史や豊かな独自文化を単なる素材としか思っていないかのような扱いに徹頭徹尾変わらないヤマト目線を感じた▼最終週に大工哲弘が再登場したのは驚いたが、しょせんは「有名な沖縄民謡歌手」としてキャスティングしたのだろう。制作スタッフには本島と八重山で島唄が全然違うことも、分からなかったに違いない。どうせ起用するなら、歌詞を1字だけ変えた『沖縄を返せ』ぐらい歌わせるべきだった。今のNHKに、そんな気概も度胸もあるとは思えないが。

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