中教審「学校教育」特別部会 教育課程のWGも至急に
中央教育審議会の初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」が3日、8カ月ぶりに第2回会合を開催し、「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ(WG)」から中間報告を受けるとともに、新たに「義務教育」「高等学校教育」の在り方で二つのWGを新設することを決定した。まさに略称の「学校教育の在り方特別部会」にふさわしく、場合によっては学制150年以来、教室の姿を含めた教育制度そのものに踏み込む可能性を秘めた審議が始まろうとしている。
とはいえ、いったい何を議論する部会とWGなのか依然として見えづらい。各WGの「主な検討事項」も総花的だったり、現段階での課題を並べたりするにとどまっている。当面はブレーンストーミングのような自由討議が続くのだろう。
委員からは、実現のための教員や施設についても検討するよう発言が相次いだ。しかしリソース(資源)の在り方も併せて検討するのが、部会のミッション(使命)のはずだ。予算に関わることは現段階で文部科学省事務局にとって慎重な扱いをしたいところだろうから、むしろ委員側から積極的な突き上げを行ってもらいたい。
その上で、あえて運営の在り方に注文を付けたい。
一つは、義務制と高校の二つのWGに分けたことである。もちろん両者は制度的にも内容的にも違いがあるのは確かなので、別個に検討した方がいいという判断も分からないではない。しかし、それでは初等中等教育全体を見渡す議論につながりにくい。委員からも指摘があった通り、親部会で綿密な報告を受けながら収れんさせてもらいたい。
もう一つは上記ともからむ話だが、教育課程に関するWGも早急に設けることである。学校教育制度全体の見直しにある程度の方向性を見いだしてから、教育課程の在り方に道筋を付けたいという意図も分からないではない。しかし、それではコンテンツ(学習内容)とコンピテンシー(資質・能力)の大胆な見直しには間に合わなくなる恐れすらある。8月に伯井美徳・初等中等教育局長(当時、現文部科学審議官)が明らかにしたように「次期」学習指導要領の改訂を2027年に、小学校の全面実施を30年度からにするのには、4年の審議期間はむしろ短いぐらいだ。コンピテンシー・ベースへの転換が中途半端に終わった17年改訂の轍を踏まないためにも、生煮えの段階だろうと同時並行的に発足させるべきである。
そうでなくても現行の教育制度はさまざまな「制度疲労」(堀田龍也・部会長代理、第1回会合での発言)を起こしており、それが学校現場の苦悩をより深めている。ここ20年来ばらばらな改革メニューが次から次へと「上から降って来」た結果、多忙化と相まって教職員間には「やらされ感」ばかりが募って判断停止状態に陥っているのではないか。それでは検討事項にあるような主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング=AL)の具体化も「多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成」も、実現は遠い。
今こそ教員の自主性・自発性を取り戻し、目の前の子どもたちの資質・能力を最大限に発揮させるとともに、協働性を通して「持続可能な社会の創り手」(検討事項)を育てるような学校教育への転換を図るべきだ。
この機会を逃しては、学制200年になっても現場の混迷は止揚されないだろう。特別部会と、それを誘導する事務局の役割は重い。
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