【内側追抜】ナントカ倍増
安全保障とは、取りも直さず安全・安心な国土を次世代に引き継ぐことですから、んー、防衛費は子ども子育て予算に再掲しても、一向に構わないと考えるのであります。
――某首相
本社配信記事「『教員給与見直し』は本当にできるか? 現場は精神疾患での休職、過去最多の危機」が6日朝、ウェブメディア「オトナンサー」にアップされた。同時転載のYahoo!ニュースには、休日に入った7日までに500件を超えるコメントが付いた。
何も反響があったことを誇りたいわけではない。そもそもコメントは記事内容に直接関係があるとは限らず、見出しやテーマ自体に対するつぶやきも多い。読んでいて改めて思うのは、既に論じた通り学校現場にある根強い文部科学行政不信である。
もちろん政治や財務当局との関係をきちんと押さえた上での書き込みもあるが、「文科省は何もする気がない」との見方が絶えないのはニュース解説者としての力不足を痛感せざるを得ない。本社は会社員時代に旧文部省担当が長かったため文科官僚に同情しがちな傾向は否定しないが、彼ら彼女らは自分たちなりに教育現場を思いやりつつ霞が関・永田町や世論にも最大限配慮しながら難しいかじ取りを余儀なくされているのも事実だ。その結果としての教育行政に限界があることは、必ずしも彼ら彼女らの無責任体質によるものとは限らない。
とりわけ気になるのは、「授業だけさせてほしい。しつけは家庭でやれ」という類いのものだ。もちろんネットニュースの短いコメントには激情型が少なくなく、字面をそのまま受け止めるには慎重さが必要だろう。しかし教員は「勉強」(知識)だけ教え、生活指導その他は家庭の責任だと考える風潮が強まっているとすれば憂慮せざるを得ない。
言うまでもなく教育は「人格の完成」(教育基本法1条)を目指す営みである。現行学習指導要領に沿って言えば、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」(同)を育成するために資質・能力の伸長を図ることが求められている。テストの成績や進学実績に重きを置くような近視眼的学校教育観が通用しないことは、もちろんだ。
ただ、そんな極論が並んでしまうほど現場に不満がたまっている事実は決して無視すべきではない。教育関係団体を通した意見書には良識を持ったお行儀の良い要望が並ぶが、そこに必ずしも教育界の「本音」はない。むしろ勤務実態や「働き方改革」に対する爆発寸前の不満が、コメント欄に噴出しているとみるべきだろう。
このような状況では、どんな改革案を提示しようと現場は反発や懐疑の姿勢を示しかねない。現場の士気を低下させないような慎重さがなければ、かえって逆効果を招きかねない。
現下の困難な状況にあっては、教育界の総力を挙げて改革案を熟議することが不可欠になろう。他省庁はもとより国民世論を動かそうとするなら、なおさらだ。本来は教職員組合にも奮起してもらいたいところだが、現実としては期待できない。
個々の教員も、ネット上の激情でガス抜きして済ませている場合ではない。いま積極的に形になる声を上げなければ、かえって改革案が悪くなることは必定だ。
本社が昨年、拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)を世に問うたのも、まずは行政担当者の意図や研究者が考える教育課程の課題を正確に伝えた上で、それを基に教育界全体で次期指導要領の在り方を主体的に考えてもらいたかったからだ。今や教職の自主性・自発性・創造性は、教員の内外ともに危機にある。だから教員自身が今こそエージェンシー(変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力)を発揮しなければ教育の未来が危うくなるだけでなく、自分の身さえ守れなくなるだろう。
◇
今後シリーズで「大改革」の課題を論じていきます。ご期待ください。
↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます
【自社広】
文科省が年末に相次いで発足させた
「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」(12月20日)、
「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」(同22日)は何を狙っている?
答えはココに!
『学習指導要領「次期改訂」をどうする ―検証 教育課程改革―』
(ジダイ社、¥1870)、まさかの重版決定で好評発売中。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
文科省が相次いで発足させる
「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」(20日)、
「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」(22日)
は何のため? 何を狙っている? 答えはココに!
本社代表社員・渡辺敦司、初の単著
『学習指導要領「次期改訂」をどうする ―検証 教育課程改革―』
(ジダイ社)、2022.10・22より発売中。¥1870(税込み)。
※大型書店では「学習指導要領・解説」のコーナーに
分類されていることがあります。ご留意ください。
amazonはこちらから。
Amazon 売れ筋ランキング
年末最終順位(大晦日23時台):
- 1,234位本
- 7位教科教育
- 18位その他の語学・教育関連書籍
- 61位教育学一般関連書籍
大改革始まりの年、本年も本社をよろしくお願い申し上げます。
「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」
代表社員 渡辺敦司
最近のコメント