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2023年4月

2023年4月26日 (水)

続・定数改善 「計画」が不可欠だ

【「大改革」議論の初年に⑤】

 氏岡真弓・朝日新聞編集委員の近著『先生が足りない』(岩波書店)は実質150㌻で一気に読め、しかも長期間にわたる綿密な取材の蓄積による中身は濃い。「筆者の失敗日記」を追体験しながら、問題の本質を徐々に理解できる好著だ。

 読後に改めて痛感したのは、やはり国による教職員定数改善計画が不可欠だということだ。

 本社も過去の取材を思い出す。かつて計画策定が当然視されていた時代、関係者が口をそろえて「安定的な採用のためには、国による計画が不可欠だ」と言っていた。そんな定数改善計画は05年度の義務制第7次計画が完成して以降、策定されていない。それが現在の教員不足につながったことは、拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする』(ジダイ社)でも指摘した。

 義務教育費国庫負担制度に基づく国の負担率が2分の1から3分の1に引き下げられ、地方の自由度が「高まった」結果がこれだ。教育の充実の名の下、非正規教員なしには学校が持たない構造を生み出してしまった。背景には地方公務員全体の人件費削減があったことは疑いない。

 この間、財務省も児童生徒減や学校統廃合の必要性を主張して定数改善をけん制し続けてきた。国も地方も、いかに予算を減らすかにしか関心がなかった。教育の充実は、学校現場の努力に任された。エビデンス(客観的な証拠)の名目で、学力の結果責任だけが問われた。その結果として起こったのが、過労死ラインを超えて働くのが常態化した学校現場の多忙化と教員不足だ。

 ここでも単純に考えよう。カネをかけなければヒトは育たない、ということだ。

 現行指導要領では、「学力」の概念を更に拡張した「資質・能力」の育成を前面に掲げている。日本でしか通用しない学力論から、世界的な潮流であるコンピテンシーへの転換だ。資質・能力を育成する「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)のためには、綿密な授業研究に基づく実践が不可欠になる。

 しかし現在、その余裕が教師にあるだろうか。だとすれば十分に資質・能力を伸ばせなくとも、教師の責任ばかりとは言えないだろう。条件整備を怠ってきた「国」の責任であり、国=政府の中で文科省が力を持ちえなかった情勢を許容してきた、国民の責任でもある。

 これから日本が世界に伍(ご)していこうと本気で思うのならば、抜本的な定数改善により正規教員を飛躍的に増やすことが求められよう。それにより狭い学力ではなく国内外でウェルビーイング(個人的にも社会的にも人々が心身ともに幸福な状態)を図るコンピテンシーの育成に注力する教育改革を、いっそう推進すべきだ。そうでなければ日本は、少子化の進展に伴ってますます衰退するばかりになろう。

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2023年4月13日 (木)

【内側追抜】国民保護情報

空襲警報、空襲警報。国民は直ちに敵国とスパイの脅威に備え、軍備増強と憲法改正を急いでください。

   ――某政権

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2023年4月11日 (火)

定数改善 TT担任制の導入を

【「大改革」議論の初年に④】

 文部科学省は「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」を掲げている。2021年1月のいわゆる「令和の日本型学校教育」答申を受けたものだ。従来の「個に応じた指導」(指導の個別化と学習の個性化)を、学習者視点から言い換えたものと位置付けている。

 単純に考えよう。ならば、チーム・ティーチング(TT)の復活が必然ではないか。

 指導の個別化と学習の個性化は、加藤幸次・上智大学名誉教授が国立教育研究所(現・国立教育政策研究所)時代に作り出した概念だ。TTは第6次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画で、指導方法の工夫改善のための加配措置として導入された。当時の加藤教授が文部省に提出した報告書が、理論的根拠となった。教育学の成果が政策に反映された、まれな例とも言えよう。第7次計画でも継続されたが、今では単年度改善や一部学級定員の引き下げでほとんど消えてしまった。

 今こそTTが不可欠な理由は、もう一つある。教室の多様化への対応だ。昨年6月の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)「政策パッケージ」では、小学校35人学級に平均で▽発達障害の可能性のある子2.7人▽特異な才能のある子0.8人▽不登校0.4人、不登校傾向4.1人▽家に本が少ない子10.4人▽家で日本語をあまり話さない子1.0人――がいると示されている。非常に分かりやすい。

 かつては教育現場に「お客さん」という嫌な隠語があった。授業についていけず、ただ教室にいるだけの子どもを指したものだ。今から考えれば、何らかの困難を抱えていたことは間違いない。当時は「成績が中くらいの子」に合わせた授業が当たり前だったが、今や「誰一人取り残さない」が基本である。「教師一人による紙ベースの一斉授業スタイルは限界に来ている」という政策パッケージの指摘は、うなずける。

 現在、小学校では学級定員を順次35人に引き下げる「計画」が進行中だが、1人の教員が1クラスを見ることに変わりはない。情報通信技術(ICT)で補完するにせよ、やはり一人ひとりにきめ細かな対応をするには1学級1教員という定数の算定基礎は大幅に発想を変える必要があろう。

 政府はようやく、技能実習生制度の見直しに乗り出した。先にも見たように、今では外国ルーツの子がどの学級にもいることは現場が肌感覚で知っているはずだ。今後どういう制度に変えようと、実質的な移民が増えるのは必然だろう。そうでなければ、いくら少子化対策を取ろうと日本社会は成り立たない。むしろ教育面で先手を打って「内なる国際化」を進め、来るべき社会の構築を目指すべきだ。

 そう考えていくと、やはり1クラスを複数で担任する必要性がますます高まろう。もちろん柔軟な運用は許されていいが、少なくとも1学級2人が算定基礎となっても何らおかしくはない。教員養成の問題は、別に論じよう。

 「失われた30年」の中で少子化も進行し、「やってる感」だけのアベノミクス10年で課題がますます深刻化してしまった。教室不足や指導死・わいせつ教員の続出といった教育問題の噴出も、そんな状況と無関係ではない。

 「教育は未来の先行投資」というキャッチフレーズが掲げられたのも、30年近く前だった。「異次元の少子化対策」を言うなら、今こそ教育に投資を行うべきだ。

 

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