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2023年6月

2023年6月28日 (水)

教師確保特別部会 事務局は「静謐」な環境の保障を

 中央教育審議会の初等中等教育分科会「質の高い教師の確保特別部会」が26日、初会合を開催して議論を始めた。2019年1月の中教審答申以来の既定路線ではあるが、昨年になって変な影がちらついている。元文部科学相の萩生田光一・自民党政調会長だ。

 もちろん、今年の骨太方針に教育の記述を大幅に盛り込ませた剛腕ぶりは評価できる部分もあろう。萩生田政調会長は、自身の肝いりでまとめた党特命委員会の提言を実現するには5000億円の国費投入が必要だとの見通しも示している。大政調会長には「安定的な財源を確保」(骨太方針2023)する腹案もあるのだろう。

 だからこそ、中教審の独立性は担保されるべきだ。文部科学省事務局は静謐(せいひつ)な審議環境を保障すべきで、いやしくも萩生田特命委におもねるような審議誘導を行ってはならない。

 「予算は限られているので、バランスや優先順位を考えざるを得ない」――初会合で、秋田喜代美・学習院大学教授が指摘したことは重要だ。処遇改善より定数改善を優先すべきだという、本社の主張とも重なろう。

 萩生田特命委の提言では、教職調整額を少なくとも10%以上に増額するとともに、新たな級の創設によるメリハリある給与体系、手当の改善などを求めている。調整額の支給割合引き上げ自体がそう容易ではなかろうし、16年度勤務実態調査に照らせば10%でさえ低すぎる。何より「メリハリ」は、非正規教職員を含め低く抑えられる層の志気を失わせかねない。

 そもそも今、昇給を求める現場の声が強いだろうか。せめて現状に報いる給与は欲しいというのは本音だろうが、逆に給与は下がってもいいから自由にさせてくれというのが大勢ではないか。

 人材確保法の給与優遇を期待して、教師になりたいという人も少なかろう。そもそもが教職に「魅力」を感じているからこそ志望するはずだ。だからこそ今さら魅力をアピールされたところで、ブラック化した現実とのギャップに悩むだけだろう。

 中教審の役割は、まさに「総合的な方策」(永岡桂子文科相の諮問文)を検討することだ。それも勤務環境にとどまらず、学習指導要領の改訂や学校教育制度全体の改革論議とセットになったものでなくてはならない。

 特別部会にも懸念を示しておこう。まずは働き方改革に関する緊急提言を出すことで合意したが、精神論をぶったところで現場の困難は何も解決しない。社会に訴えれば物事が解決するなら、とっくに改革は済んでいるはずである。期待されているのは、まさに実効性を見通した提言である。

 

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2023年6月18日 (日)

【池上鐘音】衆参法制局の憂鬱

▼アクティブ・ラーニング(AL)が消えた――2020年10月8日の当欄「内閣法制局の憂鬱」の書き出しである。それをまた繰り返すのも能がないが、別の角度から憂鬱になる▼16日の参院本会議で可決、成立した法律は通称LGBT理解促進法などと呼ばれるが、正式には「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」という。自民・公明の原案に日本維新の会・国民民主の主張を取り入れて修正された▼そもそも2021年の超党派議連では、「性自任」 を採用することで同意されていた。それを自民が「性同一性」に修正し、さらに維新がどちらにも解釈できるよう「ジェンダーアイデンティティ」を提案した▼内閣法制局は人事でなし崩しになったが、衆参の法制局職員はどんな思いだろう。「時代に対応し得る法律」(20年4月、参院法制局「法律の〔窓〕)になったと自らを納得させようとしているだろうか▼法令に準じる告示でしかない学習指導要領でさえ、ALは機械的に「主体的・対話的で深い学び」に置き換えられた。しかし肝心の法律でさえ積極的に定義を曖昧にするためカタカナ語を使えるのであれば、解禁されたも同じだろう▼セーフティネット、デジタルデバイス、ハイブリッド、セキュリティポリシー……21年1月の中央教育審議会「令和の日本型学校教育」答申から拾ってみても、カタカナ語が氾濫している。教育界にとっては、既に浸透したものだろう。だから次期指導要領に盛り込むことは、むしろALのような混乱を避けることになるかもしれない▼しかし戦後日本はもとより明治維新から積み上げてきた何かが、角砂糖に水をかけたように崩れていくような思いがするのは心配のし過ぎだろうか。もっとも、修正法案でさえ「日本の伝統を壊す」と議決時に退場した与党議員が続出したというが。

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