« 2023年8月 | トップページ | 2023年10月 »

2023年9月

2023年9月30日 (土)

「無理」を可能にする定数改善の展望を

 秋田喜代美・学習院大学教授は28日に開催された中央教育審議会の教員養成部会で、部会長としてではなく「無理なのは分かっているが」「個人的には不可能だと思いつつも」と断りながら、産休・育休代替教員やスクールカウンセラー(SC)・スクールソーシャルワーカー(SSW)の計画的・安定的雇用が必要だとの考えを示した。

 これを「無理」「不可能」に終わらせてはならない。に主張した通り、まさに学習指導要領の次期改訂と一体になった本格的な教職員定数改善の中で検討すべき課題だ。

 9月発売の『月刊教職研修』(教育開発研究所)10月号には、教員一人当たり持ちコマ数に着目した改革を訴える浜田博文・筑波大学教授の特別寄稿が載っていた。これも中教審などの会合で、委員からたびたび指摘されている論点である。しかも「働き方改革」のための削減にとどまらず、教材研究の時間を含めるよう求めている点が重要だ。

 次期改訂では、真の意味でコンテンツ(学習内容)ベースから脱却したコンピテンシー(資質・能力)ベースへの転換が待たれよう。本社としては、指導要領の本体をコンピテンシー規定に絞ってコンテンツは解説等に回すといった大胆な見直しが必要だと思っている。そうなれば、コンピテンシーを育てるための授業研究が決定的に不可欠になる。第2期GIGAスクール構想に基づく情報通信技術(ICT)の活用も、そうした中でこそ保障されよう。

 これまで産育休代替は主に、教員採用試験で不採用になった「教職浪人」によって担われてきた。だからこそ志望者減が「教員不足」の主要因だと文部科学省は説明してきたのだが、考えてみれば臨時任用教員も含め質保証のない人材に正規教員と同等の教育活動を負わせてきたこと自体が問題ではないか。

 29日には東京都の2024年度教員採用試験で、小学校の受験倍率(大学3年生の前倒し選考は含まない)が1.1倍にまで低下したことが発表された。もはや競争試験で質保証をすることはできず、ましてや教職浪人に期待するのは論外だ。そんな時に、いくら教職の魅力を訴えても効果はない。そもそも現在の学校がブラック職場だと認めることが、すべての改革の出発点だろう。

 大量退職・大量採用で若年層が増えている時だからこそ定数に参入して正規教員を充て、需給に余裕が出たら優秀教員育成の研修要員に回せば決して税金の無駄遣いにはならない。そうしてこそ産育休のみならず、教職全体が魅力あるものとなる。

 先の社説で教員就職者に対する奨学金返還免除を復活させる必要性を強調したのも、まさにその点にあった。これからは社会人出身者も含めて優秀な人材を養成段階から引き付け、育成して確実に採用する流れが不可欠だ。その意味で教育学部・教職大学院の「シン・師範学校」化が検討されてよい。私学への人材供給としても期待されよう。

 非常勤のSCやSSWも本来、高収入な本業との掛け持ちが想定されていたはずだ。これを実態に合わせて、必置の専門職として定数化する必要が今やある。そうでなければ、いじめ・不登校をはじめ生徒指導上の諸問題も抜本的改善は見込めまい。

 未熟な教員でも検定教科書を使えば、全国的に一定水準の授業ができる。「研究と修養」によって、生涯をかけて優秀な教員を目指し続けてくれればいい――。そんな牧歌的な姿は指導面でも体制面でも、すっかり過去のものになっている。VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に合って持続的な日本社会のために本気で児童生徒の資質・能力を伸ばすためにも、教室の多様性を前提とした新しい発想で定数の算定基礎を根底から見直すべき時だ。

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

にほんブログ村

 ↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます

| | コメント (0)

2023年9月 3日 (日)

2024年度概算要求 本格的定数改善の足掛かりに

 文部科学省は2024年度概算要求で、公立義務教育諸学校の教職員定数について「純増」を要求した。実現の可否にかかわらず、来るべき本格的な定数改善に向けた足掛かりとして今後の戦略と戦術を練るべきだ。

 定数を巡っては小学校の全学年35人学級化などに向けた改善計画が進行中で、24年度は第5学年への措置を中心に3610人を計上した。これに加えて22年度から開始した高学年で教科担任制を行うための計画完成を1年前倒しして、2年分の1900人を計上。中学校生徒指導など教育課題対応の加配(400人)を合わせると、改善数は5910人に及ぶ。これに23年度からの定年引上げに伴う特例定員(4857人)を加えれば、1万767人となる。少子化に伴う自然減(7776人)を差し引いても、2991人もの大幅な改善要求だ。

 どこまで特例定員を活用するかの攻防にもなろうが、もし純増が実現すれば民主党政権の11年度予算以来13年ぶりとなる。当時は300人にすぎなかったし、小学校第2学年以降の本格的35人学級化も結局は自公政権に持ち越される限界があった。

 強気の要求の背景にあるのは、教員の働き方改革のための持ちコマ数軽減と自民「令和の教育人材確保に関する特命委員会」(委員長=萩生田光一政調会長)の提言「令和の教育人材確保実現プラン」に影響を受けた「骨太方針2023」の記述だ。

 ただ、24年度から3年間の「集中改革期間」で改革を終わりにしてはならない。概算要求では定数改善以外にも支援スタッフの充実経費が盛り込まれているが、これらはあくまで単年度措置であり負担「軽減」策でしかない。待たれるのは中学校や交付税措置の高校も含めた抜本的な定数改善であり、それには学習指導要領の改訂も含めた学校教育制度との一体改革が不可欠になる。

 それまでは中学校の35人学級化も含め、可能な限り改善を推し進めるしかない。しかし現段階でどこまで足掛かりを付けられるかが、決定的に重要になろう。

 にも少し触れたが、もう現場の努力による「働き方改革」は損切りすべきではないか。その上で、改めて「定数が増やせないと、子どもの資質・能力もこれ以上の質的伸長は図れない。VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に、それでもいいんですか」と迫るべきだ。

 もちろん教員の資質能力向上策は別途、講じなければならない。まずは予算折衝で、教員就職者に対する奨学金返還免除を復活させることが第一だ。

 今回の概算要求に限界があることは、致し方ない。それでも、どこまで「取れる」かが今後の行く末を方向付ける重大な局面にあるとは言えるだろう。

 

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

にほんブログ村

 ↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます

| | コメント (0)

« 2023年8月 | トップページ | 2023年10月 »