【池上鐘音】安倍首相の「後押し」
▼国土交通省海事局が2014年10月~18年10月、法律で人事交流が認められていない日本財団に外郭団体を経由して「脱法的な二重出向」をさせていたと東京新聞が23日朝刊でスクープした。記事では政治的背景として、同財団が提言した海洋開発の人材育成の必要性を後押しした安倍晋三首相(当時)の存在を指摘している▼思い起こされるのは、現行学習指導要領の答申に向けて大詰めを迎えていた16年秋の中央教育審議会だ。唐突に「海洋教育」が検討課題として浮上したことについては、過去の社説でも取り上げた。たった1回の部会審議で引っ込められたが、官邸の指示で検討だけはしたと後で聞いた▼海洋教育と同時に掲げられた主権者教育は答申に盛り込まれ、指導要領には高校の公民科に「主権者」の文言が入った。18年8月に設置された文部科学省「主権者教育推進会議」で、座長が憲法改正に言及したことも過去に批判した。安倍首相が退いた後の21年3月にまとまった最終報告で投票の義務化は「非常に反対が多かった」(議事録)として盛り込まれなかったが、「別立て」(同)の座長見解が同省ホームページ(HP)に載ることはなかった▼先ごろ政府が解散請求命令を出した旧統一教会を巡っても、現在の「世界平和統一家庭連合」に名称変更された経緯について文化庁宗務課長も経験した前川喜平・元文部科学事務次官が疑義を示している。1968年に統一教会を母体として設立された国際勝共連合が、安倍元首相の祖父である岸信介・元首相や日本船舶振興会(現日本財団)創設者の笹川良一氏が発起人を務めたのも周知のことだ▼かくも安倍政権下では、おかしなことが多々あった。日本財団といえば、競艇の収益金で補助・公益事業を行う国交省の外郭団体である。経済産業省は大丈夫か、と競輪ファンは心配になってしまう。
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