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2023年10月

2023年10月24日 (火)

【池上鐘音】安倍首相の「後押し」

▼国土交通省海事局が2014年10月~18年10月、法律で人事交流が認められていない日本財団に外郭団体を経由して「脱法的な二重出向」をさせていたと東京新聞が23日朝刊でスクープした。記事では政治的背景として、同財団が提言した海洋開発の人材育成の必要性を後押しした安倍晋三首相(当時)の存在を指摘している▼思い起こされるのは、現行学習指導要領の答申に向けて大詰めを迎えていた16年秋の中央教育審議会だ。唐突に「海洋教育」が検討課題として浮上したことについては、過去の社説でも取り上げた。たった1回の部会審議で引っ込められたが、官邸の指示で検討だけはしたと後で聞いた▼海洋教育と同時に掲げられた主権者教育は答申に盛り込まれ、指導要領には高校の公民科に「主権者」の文言が入った。18年8月に設置された文部科学省「主権者教育推進会議」で、座長が憲法改正に言及したことも過去に批判した。安倍首相が退いた後の21年3月にまとまった最終報告で投票の義務化は「非常に反対が多かった」(議事録)として盛り込まれなかったが、「別立て」(同)の座長見解が同省ホームページ(HP)に載ることはなかった▼先ごろ政府が解散請求命令を出した旧統一教会を巡っても、現在の「世界平和統一家庭連合」に名称変更された経緯について文化庁宗務課長も経験した前川喜平・元文部科学事務次官が疑義を示している。1968年に統一教会を母体として設立された国際勝共連合が、安倍元首相の祖父である岸信介・元首相や日本船舶振興会(現日本財団)創設者の笹川良一氏が発起人を務めたのも周知のことだ▼かくも安倍政権下では、おかしなことが多々あった。日本財団といえば、競艇の収益金で補助・公益事業を行う国交省の外郭団体である。経済産業省は大丈夫か、と競輪ファンは心配になってしまう。

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2023年10月22日 (日)

【社告】おかげさまで1周年! 第2刷、チョボチョボ売れてます(笑)

2024年秋の諮問に向けた準備作業
(中教審特別部会、有識者検討会)
ほぼこの本の通り進行中!

本社代表社員・渡辺敦司、初の単著

『学習指導要領「次期改訂」をどうする ―検証 教育課程改革―』

ジダイ社より2022.10・22刊
(2023.8.20初版2刷)、¥1870(税込み)。

※政府刊行物取り扱い書店にて発売中。
「学習指導要領・解説」のコーナーに
 分類されていることが多いのでご留意ください。

 amazonはこちらから。

 

 【訂正】
 本書奥付中、著者略歴のうち
 「『ベネッセ教育情報サイト』『オトナンサー』などの」
 を削除します。
 改版の際は修正しますが、おそらくないと思われますので。

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2023年10月18日 (水)

【池上鐘音】命の非対称性

▼フリーになってしばらく、手当たり次第に映画を見ていた時期がある。以前は年に数本だったのに、最高で80本に達したこともある▼毎月のようにあったのが、ナチスやホロコーストに関する作品だ。ヒューマンドラマとして優れたものが多かったが、仕事が忙しくなり見る本数が減少するに従って意識的に避けるようになった▼もちろん第2次世界大戦中の悲劇は、忘れられるべきではない。しかし今も映画が次々と制作されるのは、それだけユダヤ系の資本が潤沢であることの表れだろう。気になったのは、パレスチナ問題との非対称性だ▼ユダヤ国家建設という民族の悲願を否定はしないが、アラブ人が土地を追われたことも確かだ。4次にわたる中東戦争の後も、ヨルダン川西岸やガザ地区にユダヤ人入植地が建設されていった。オスロ合意の後になっても、だ。軍事力と経済力の非対称性は、言うまでもない▼ガザを実効支配するハマスが、かつてない規模でイスラエルを攻撃した。しかしパレスチナ側の死者数はあっという間にイスラエル側の倍になり、ガザ市内の病院が空爆され500人以上が死亡したという情報まで飛び込んできた▼先に仕掛けたのはパレスチナ側ではないか、という見方もあろう。しかしパレスチナ問題には、第1次大戦中の「三枚舌外交」以来の長い経緯がある。単なる善悪や正邪では語れない、国際関係の最たるものだ▼英国ではBBCがハマスをテロリストと呼ばない編集方針を取っていることに、政府や与野党で批判が高まっているという。しかしパレスチナ問題の源流を作った膝元で中立を保とうとする「公共放送」の立場は、称賛に値しよう。さて、日本はどうか。公教育でも政府方針を優先させるばかりでは、複雑な国際問題を理解することなどできまい。

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