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2023年11月 6日 (月)

【池上鐘音】疑問の叙勲

▼4日、ある文部科学官僚(現在は出向中)の講演を聞きに行った。テーマは「探究」で、国際機関の経験を踏まえた例えが分かりやすかった▼シンガポールでは、日本に少し遅れて「ゆとり」を創出したという。カリキュラムの内容を削減する一方で、日本の総合的な学習の時間に近い「プロジェクト・ワーク」を導入。そんな「TLLM(Teach less, learn more=少なく教えて多くを学ぶ)イニシアチブ」を維持することで「生徒の学習到達度調査」(PISA)の好成績を続け、主催する経済協力開発機構(OECD)にも注目されている▼米国の研究によれば探究には四つのレベルがあり、プロセスを追って行わなければ効果が出ない。しかし日本では教科が「結果が分かっている原理を確認する」レベル1を、総合学習が「自ら立てた問いを調査する」レベル4を扱うものの、レベル2・3がすっぽり抜けているのが問題だという▼中央教育審議会などの諸会議で、ようやく「カリキュラム・オーバーロード(教育内容の過積載)」が議論に上ってきた。教育内容の減らし方に原理があるかないかの違いはあるが、「ゆとり教育」の再来と乱暴に呼ぶこともできなくはない。そもそも「ゆとり教育」に定義などないことは、拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする』でも指摘した▼講演を印象深く思ったのには、前日の3日に秋の叙勲が発表され中山成彬・元衆院議員が旭日大綬章を受章したこともあった。前例踏襲・横並びの選定とはいえ、舌禍により就任5日で国土交通相を辞任した御仁が果たして適当だったのかどうか▼読売新聞地方版の受章インタビューでは、政界の思い出として「ゆとり教育」の見直しに力を注いだことを挙げていた。確かに文部科学相時代、省外で「ゆとり教育批判」にさおさす発言を繰り返した。学力低下の要因として、総合学習もやり玉に挙げていた▼PISAでシンガポールの後塵(こうじん)を拝しているのも、その悪影響だ――と言ってしまうのはさすがに言い過ぎか。しかし「(現役の)政治家は真剣に考えないといけない」というのは、当時のこの人にそっくり返したい言葉である。

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