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2023年11月 8日 (水)

学術会議報告 高大「教育接続」論議を急げ

 日本学術会議の心理学・教育学委員会高大接続を考える分科会が9月、「日本における高大接続の課題―『セグメント化』している現状を踏まえて―」と題する報告書をまとめた。高大接続の2側面のうち、入試接続よりも教育接続の重要性を打ち出した意義は強調してもし過ぎることはない。

 とはいえ20ページにも満たない本文は、まさに「視点」を整理した程度にとどまっている。関連するディシプリン(学問分野)が多岐にわたるとはいえ、付録で関連論考を載せただけでは隔靴掻痒(そうよう)の感が否めない。

 本社は拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)の中で、文部科学省が学術会議に審議依頼を行うことを提案した。裏を返せば、学術会議の側から積極的な提言をすることは大歓迎だ。

 当たり前だが、文科省の側から審議依頼が行われる可能性は限りなくゼロに近い。拙著の刊行から1年が過ぎ、既に次期改訂の「編集方針」論議は水面下で半ばに差し掛かりつつある。中央教育審議会への改訂諮問も、ちょうど1年後とみられる。その時までにはコンテンツ(学習内容)やコンピテンシー(資質・能力)の整理方針も、内部では固まっていよう。

 そんな時に「各界の協力を得つつ広く議論を喚起する」などと悠長なことを言っている場合ではない。高校に限っても2028年告示となれば、35年以降の大学入学者選抜をも縛ることになる。この1、2年の議論が、10年先の高大接続を決することになるのだ。

 たとえ生煮えでもいいから教科とディシプリンの関係について、少なくとも高校関係者と議論を始めるべきである。それが来るべき中教審での審議にも影響を与えることになろう。

 実は拙著の最後に連ねた稚拙な提言には、過去の学術会議提言から学んだことも多い。「市民性教育」に軸足を置くべきことを置くよう提言したのも、大学教育の分野別質保証で参照基準の構成項目の一つに「市民性の涵養(かんよう)をめぐる専門教育と教養教育の関わり」が掲げられていたことに触発されてのことだった。

 カリキュラム・オーバーロード(教育内容の過積載)問題も関係者のキャンペーンが奏功してか、学校の働き方改革と相まって必要性に理解が広まりつつある。意味のない「ゆとり教育批判」を再燃させないためにも、学術に裏付けられた骨太のカリキュラム原理を示すことが急務だ。

 事は初等中等教育、ないしは高大接続の課題にとどまらない。高等教育機関の研究力、さらには日本の将来を左右する大問題だ。今こそ「行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」(日本学術会議法)目的を実現すべき時である。

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