【内側追抜】ルッキズム発言
元首相(口をひん曲げながら)「言われた当人が『ありがたい』って言ってんなら差別じゃねえよな」
歳費チューチュー議員「差別されたと言わない限り差別は成り立ちません」
2024年を迎えた。秋にも中央教育審議会に諮問される学習指導要領の改訂に合わせ、抜本的な教育改革議論を進めるべき年である。
カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)に対応してコンテンツ(学習内容)を大幅に整理し、コンピテンシー(資質・能力)中心の指導要領へと本格的に「構造改革」する――。これは、もう次期改訂の既定路線としておこう。問題は、その先にどんな学びの姿を描くかである。
拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(22年10月、ジダイ社)でも触れたことだが、エージェンシー(変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力)に基づく「市民性(シチズンシップ)教育」を中心に据えたい。
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の「政策パッケージ」(22年6月)を主導した合田哲雄・現文化庁次長は拙著のインタビューで、課題意識の一つに米国連邦議会議事堂の襲撃やロシアのウクライナ侵攻など「民主制の危機」を挙げていた。ハマスの攻撃を契機としたイスラエルによるガザ地区の大量破壊と虐殺、自民党派閥の政治資金パーティー券キックバック問題など、危機はますます進んでいるとみなければなるまい。
さらに国内で静かに進行しているのは、少子高齢化に伴う労働力不足である。これまで日本はかたくなに移民政策を採ってこなかったが、いずれズルズルと海外人材を求めなければ社会が立ち行かなくなる時期が訪れよう。その時までも政治は、きっと外国人技能実習制度のような建前の制度ばかり打ち出すことだろう。
これはもう、「教育の力にまつ」(旧教育基本法)ほかない。外国ルーツの児童生徒が急増することを前提に、あるべき社会構築のためにも今から準備すべき最優先課題の一つではないか。
今でも「家で日本語をあまり話さない子供」が、小学校35人学級に平均1.0人いる。今後もっと増えていくことは必定だ。そうなると、もう「適応」で済ませられる問題ではない。逆に、日本社会全体の多様化・国際化に寄与してもらう人材として期待したい。彼女ら彼らの多くが実際、家庭で果たしている役割である。
シチズンシップ教育は、移民の増加を背景に欧州で広がった。市民社会への適応を目指す向きもないではなようだが、むしろ社会の多様性と包摂性(ダイバーシティー&インクルージョン)を進める意義を強調したい。新たな教育振興基本計画が「公平、公正」を加えたDE&Iとウェルビーイング(個人的にも社会的にも人々が心身ともに幸福な状態)を打ち出したなら、なおさらである。
まずは教室から、障害や貧困など困難を抱える児童生徒も含めDE&Iを重視した市民性の育成を目指すことが急務だ。そのための教育課程の基準改訂と、それを実現するための学習基盤(条件整備)との一体的改革が求められる。
市民性教育が「主権者教育」に名を借りた投票教育に矮小化されてはいけないことは、言うまでもない。何より「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」の育成という改正教基法の理念にも合致しよう。
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