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2024年3月30日 (土)

教職員の高度専門職化 まずは学習評価と特別支援から

 2月12日の社説「改訂諮問の年に③ 『学習評価』の根源的な捉え直しを」について、本社と同じブログランキングサイト「にほんブログ村」教育論・教育問題に参加する“しょう”さんが24日、「渡辺敦司『学習評価』の捉えなおし について」と題して取り上げてくれた。

 社説は多くの教師に学習評価の専門性が薄いことを批判したものだったが、実は現場の総スカンを食うかと内心ヒヤヒヤしていた。それが日ごろから社会問題に粘り強い思考を展開していて敬服する高校教員、しかも内地留学で学習評価を学んだという文字通りの専門家に高評していただいたのは、ありがたい。もちろん、学術的厳密性に欠ける部分は容赦いただいた上であろうが。

 “しょう”さんが引用する中内敏夫の「評価もまた教育でなければならない」というのは、重要な指摘だ。「指導と評価の一体化」が叫ばれながら、結局は評価も指導改善のための手段と受け止める向きが強いのではないか。そうではなく、まさに一体のものとして日々の教育活動に生かされなければなるまい。

 実はもう一つ、胸をなで下ろしたことがあった。「わが国で唯一の教育評価に関する専門誌」(編集部)である『指導と評価』が、3月号から学習評価の全体像を解説する特集を始めたのだ(不定期)。巻頭言で編集委員の鈴木秀幸・教育評価総合研究所代表理事は、学習評価が実務上の困難に直面している原因の一部は「学習評価の基礎知識の不足によると思われる」と指摘。一取材者の偏見ではないことが確認できた。

 折しも中央教育審議会では、「質の高い教師の確保」策が議論されている。世間でも「定額働かせ放題」の教職給与特別法(給特法)を廃止するか否かが注目されているが、特別部会ではむしろ高度専門職にふさわしい処遇の在り方として検討されていた。教職に就いた大学院修了生の奨学金を返還免除の対象にする方針が教員養成部会で固まりつつあることを受けて、盛山正仁文部科学相も実現に前向きな姿勢を示している。

 これも現場の反発を承知で申し上げれば、現在の教職が本当に高度専門職と呼べるかどうか若干の疑問を抱かざるを得ない。もし本気で医師や弁護士などと同等の専門職にしたいのなら、いつまでも自主的な「研究と修養」(教育基本法・教育公務員特例法)に任せていてはいけない。かつて民主党政権下で検討された養成課程の修士レベル化だけでなく、“しょう”さんが体験したような内地留学を本格的に「再開」させるべきだ。かつて学部卒の返還免除はもとより、一部とはいえ無償・有給で大学院に行ける機会があったことも教職の魅力だったことを若い世代は知らないだろう。

 何より学習評価は、そもそも専門職として必要な「基礎知識の不足」状態が放置されている。一刻も早く、全教員の研修体制を確立すべきだ。

 もう一つ放置されていることがある。特別支援教育だ。「特殊教育」から移行して20年近くになるというのに、いまだに現場は発達障害を含む困難を抱えた児童生徒の指導に自信を持てないでいる。技術もそうだが、そもそも「基礎知識の不足」が放置されたままだからだろう。

 『教育と医学』3・4月号は「発達障害のグレーゾーンの子どもたち――その理解と支援」を特集しており、青木省三・川崎医科大学名誉教授は発達障害が「ある」「なし」で分けられないばかりか「人は皆、グレーゾーン」だと喝破している。筆者も、日ごろのモヤモヤが晴れる思いがした。そうである以上は発達障害の診断を求めがちな現場の傾向は改めるべきだし、ましてや昨今よく報じられているように児童生徒に暴言を浴びせたり暴力を働いたりするのは論外だ。

 いずれにしても教職を本気で高度専門職にしたいのなら、「高度」専門職として育成する道筋と具体的施策を提示しなければならない。研修を充実させるにしても、勤務の余裕が不可欠なのは言うまでもない。しかも多忙化で教材研究ばかりか授業準備さえ十分にできない状態が続けば、教職の魅力をアピールすることなど恥ずかしくてできないはずだ。

 

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コメント

 応答いただきありがとうございました。
 現時点で私なりに考えていることを、再度(途中までですが)まとめてみました。時間的余裕があるときに、ご一読いただければ幸いです。

投稿: しょう | 2024年4月15日 (月) 21時03分

しょうさん、ありがとうございます。貴ブログにコメントさせていただきました。
特別支援教育に関してのご指摘も感謝します。「そもそも『基礎知識の不足』が放置されたまま」としたのは少々言い過ぎ、または説明不足だったかもしれません。別途展開できればと考えております。

投稿: 本社論説 | 2024年4月16日 (火) 07時41分

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