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2024年4月20日 (土)

「教師確保」素案〈上〉 定数改善に禍根残さぬか

 19日の中央教育審議会初等中等教育分科会「質の高い教師の確保特別部会」第12回会合で、審議まとめの素案が示された。これほど開催前から注目された案文も近年、珍しい。

 教員給与特別措置法(給特法)の廃止が打ち出されなかったことを批判する向きもあるが、教職調整額の増と「学校の働き方改革」は全くの別問題だ。むしろ半世紀もの間、調整額の支給率引き上げが放置されていた方がおかしかった。

 素案には、支給率を「少なくとも10%以上とすることが必要」との指摘が盛り込まれた。確かに特別部会では引き上げるべきだとの意見が相次いでいたが、具体的数値が検討された記憶はない。もちろん、それによって財源がどのくらい必要かのデータも示されていない。

 何のことはない、昨年5月に自民党「令和の教育人材確保に関する特命委員会」(萩生田特命委)が出した提言と同じだ。時間外在校等時間を将来的に月 20 時間程度となることを目指すというところまで一緒である。人材確保法による給与改善後に優遇分が7%だった水準を確保するため、という根拠が示されたことだけが目新しい。

 仮に支給率を10%に引き上げるとすると、4%の2.5倍に相当する。4%の根拠は1966年の教員勤務実態調査で時間外在校等時間が約8時間だったことだが、8時間の2.5倍は20時間になる。萩生田特命委も中教審特別部会も出どころは文科省だと考えれば、当然だろう。 

 では、幾ら必要になるのか。参考になるのは、前回の「学校における働き方改革特別部会」第8回会合(2017年11月)であった文部科学省事務局の説明だ。当時の財務課長は委員の質問に「しっかりした試算を出しているわけではない」と断りながらも、調整額1%分の国庫負担分は約120億円で4%だと500億円弱になるとの数値を披露した。

 この数値が今もほぼ変わらないとしたら、10%に引き上げるには国費で約720億円の追加費用が必要になる。国庫負担率は3分の1だから、3分の2の地方負担分は約1440億円だ。なるほど国と地方を合わせて9000億円を軽く超えるとされた7年前に比べれば、はるかに現実的な数字である。

 それでも財源捻出が厳しいことに変わりはないが、文科省は引き続き「骨太の方針」に強気の文言が盛り込めると見込んでいるのだろうか。確かに萩生田光一・特命委員長は安倍派の裏金問題で党から処分されたとはいえ、党役職停止1年で都連会長は続投可能だそうだから他の派閥幹部に比べ「失脚」はしていない。

 素案には、教職員定数改善に期待する文言が端々にたくし込まれている。しかし支給率の引き下げが、本格的な改善論議に支障を来すとしたら問題だ。調整額は本給に組み込まれるから、退職金にも反映され将来的な財政負担につながることも指摘しておこう。

 本社はかねて、処遇改善の余裕があるなら定数改善に回すことを主張してきた。もちろん処遇改善も定数改善も両方勝ち取れる見込みが文科省にあるのなら、結構な話である。不思議なのは特別部会の中で「限られたリソース(財源)をどう配分するか」といった意識が表明されていたのに、素案には反映されず委員から異論すら出されなかったことだ。わずかに教育研究家の妹尾昌俊委員が時間外20時間程度を目指すことに「反対」を表明し、連合副会長の金子晃浩委員も早急に20時間とするためのロードマップを示す必要性を指摘したことが救いだ。 

 

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