指導要領の改訂審議スタート〈上〉 超「資料」基に現場参画で徹底議論を
昨年12月25日に開催された中央教育審議会総会に、中国出張中だった阿部俊子・文部科学相の臨時代理「国務大臣 中根順子」(三原じゅん子・こども家庭相)名で2本の諮問があった。教育課程の基準の在り方▽「質の高い教職員集団」形成の方策――だが、前者の諮問理由の最後にある「教育課程の実施に必要となる条件整備」も数えれば実質3本だ。
2025年から、学習指導要領の改訂をはじめとした初等中等教育改革の大論議が本格化しよう。教育現場も、この機会を逃してはならない。
開会と同時に公開された諮問理由文を一読して、驚いた。「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」(いわゆる天笠検討会)論点整理の内容が、想像以上に反映されていたことだ。これはもう「資料」の域を超えている。
同検討会委員の多くが「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」(学校教育特別部会)をはじめとした中教審の部会等と共通していることは、論点整理が指摘する通りだ。これら会議体は、委員という個人単位で認識を共有してきた。
裏を返せば、政策的には必ずしも整合性が取られていないということでもある。しかも9月の天笠検討会論点整理にせよ12月24日付で正式決定した学校教育特別部会「義務教育の在り方ワーキンググループ(WG)」審議まとめにせよ、年末諮問のスケジュールに間に合わせるため急いでまとめた感がある。要するに、生煮えだ。
もちろん一部の主要委員にとって、次期改訂の布石となる必要な提言は盛り込めたに違いない。どういうことかは今後、審議が進むにつれ明らかとなろう。その点が、前回改訂(現行指導要領)とは違う。
ただ一部報道で授業時間の「5分短縮」ばかりがクローズアップされるように、諮問の真意が必ずしも正しく理解されているとは限らない。一方で、なかなか気付かれにくい「地雷」も仕掛けられている。
どちらにしても現場による諮問の「主体的」読みがなければ、改訂論議に建設的な参画などできない。本気で「教育課程の実施に伴う負担」を軽減させたいと思うなら、なおさらだ。
諮問に先立つ24日、子どもに意見を聞いて改訂に反映させる方針を出張前の阿部文科相が表明した。それ自体は結構な話だし、子どもを主語にするという既定路線とも整合する。ただ、それ以上に現場の声を聴くことも重要である。
今回の諮問は、ある意味で未完成だった現行指導要領の欠点を補うための総ざらいという側面も持っている。だからこそ現場の参画による徹底した議論と納得感の下、答申と改訂告示にこぎつけたい。そのプロセスを踏むことも、今回改訂の大きな特色となろう。
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