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2025年7月

2025年7月18日 (金)

【池上鐘音】排外主義をよそに

▼20日投開票の参院選を巡り、日を追うごとに一部政党の排外主義的な主張が目立ってきている。争点化に伴って政府も急きょ外国人政策の司令塔を設置するなど、議席確定後が思いやられる▼そんな折に接するにつれ、公示から週が明けた7日に開催された文部科学省の会合を思い出す。「外国人児童生徒の教育の充実に関する有識者会議」(2025年度第4回)だ。議論の整理(素案)ではグローバル化と少子化・人口減少が進む中、共生社会の実現は不可欠だと強調。学校全体が多様性を包摂し強みにできるよう、マジョリティー(多数派)の変容さえ説く▼日本語指導が必要な児童生徒は外国籍・日本国籍ともに年々増え、23年度は計7万人に迫っている。集住化と同時に、散在化も進む。小学校35人学級に平均1.0人という数値は、全国どこの市町村にも無縁ではない▼有識者会議で注目されるのは、日常生活に困らない日本語指導から踏み出していることだ。各教科等で資質・能力を育成するには、母語の力を借りてでも学習言語を獲得しなければならない。そうしてこそ外国ルーツの子どもはグローバル人材となれるのだし、日本ルーツの子たちにも好影響を与えてくれる▼こうした地味な、しかし重要な議論が進められていることを頼もしく思う。ヘイトスピーチに苦しむ子たちに正対するのも、また学校現場だ▼有識者会議では、家族や外国人コミュニティーの重要性も指摘されている。移民排斥のような言説は、教育にとっても百害あって一利ない。

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2025年7月15日 (火)

合田高等局長 1年後の異動にも期待する

 人事はヒトゴトという名言を昔、文部省(当時)の課長に教えてもらった。最初に聞いた時は意外だった配所も、後で振り返ると妙に納得できるのだという。周囲はもとより、当人にとってもだ。

 文部科学省の幹部人事が15日、発令された。旧統一教会の解散命令問題が一段落したタイミングで合田哲雄・文化庁次長の異動は確実視されていたが、初等中等教育局長への就任を期待していたのは小・中・高校教育関係者だけではないだろう。

 確かに高等教育を巡っては第13期中央教育審議会の下、大学の再編・統合・連携による「知の総和」向上という難題を抱えている。もともと入省以来「高等教育スクール」(旧高等教育畑)で育成されてきた合田氏の局長就任は、まさに「適材適所」(阿部俊子・文部科学相、8日の閣議後会見で)と言える。

 合田氏が約3年も文化庁に留め置かれている間、初中局の方は既に学習指導要領の改訂論議が進んでいる。そのタイミングで局長を代えない方がいい、という判断は当然だ。

 入省年次で合田氏より1期上の伊藤学司・高等教育局長を局長級とはいえ「格下」の文化庁次長に交代させるのも、旧統一教会問題の事後処理を考えれば納得せざるを得ない。

 しかし合田氏の異動が1年早かったら、改訂論議も少し違ったものになったのではないか――。中教審の教育課程企画特別部会(企特部会)での議論を聞いていて、つい想像してしまう。

 異動が発令された今、むしろ前向きな期待も浮かぶ。1年後は教員の養成・採用・研修改革も含め、二つの諮問に対する答申化の論議が佳境を迎える時だ。とりわけ教員養成部会が頼りない中、実装のための条件整備を真剣に構想する必要がある。

 文化庁在任時も合田次長は持論として、学校教育法の大幅改正による指導要領の「教育プログラム」化を省外で訴えてきた。企特部会での論議も、実質的にはそれに近い形で進んでいる。後は、それに見合った教職員定数を巡る標準法の大改正ができるかどうかだ。もちろん、それには予算獲得もセットで必要になる。

 むしろ合田氏の出番は、これからだ。初中―高等間の局長横滑りは省庁再編後、珍しくなくなった。その先には当然、省審議官や事務次官が展望できよう。もちろん人事は、時の政局などにも左右されるヒトゴトではあるのだが。

 

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2025年7月11日 (金)

指導要領改訂論議 教科等WG設置を歓迎する

 9日に開催された中央教育審議会の教育課程部会で、教育課程企画特別部会(企特部会)の下に「専門部会等」を設置することが決まった。企特部会の論点整理を待たない設置を、むしろ歓迎したい。

 10年前の前回改訂で、企特部会の論点整理がまとまったのが2015年8月26日。「学校段階等別・教科等別ワーキンググループ(WG)等」開催案内の第1報が告知されたのは、10月16日だった。今回の論点整理は「秋ごろまで」(文部科学省事務局)の予定だから、審議時間を確保するため取りまとめを待たずに設置を決めた。

 それでも実際にWG等が動き出すのは「企特部会の審議まとめが出た後」(教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授)になる見込みだという。人選や日程調整などの準備には、それだけ時間が掛かるというわけだ。実際、前回は「冬にかかってから」(同)発足したWGもあった。

 今回は衆院選(昨年10月)の影響もあり諮問自体が12月25日と、ただでさえ前回(14年11月20日)より1カ月遅れている。しかも水面下でさえ、教科等見直しの準備作業に着手した様子は見られなかった。

 一方で今回の改訂は前回からの延長で「課題は既に明確」(奈須教授、22年の拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする』ジダイ社)な中、24年9月の「天笠検討会(今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会)」論点整理を挟んで周到な諮問が行われた。企特部会に入っても数々の難題を、淡々とこなしているようにさえ見える。

 会合は毎回1000人を超える傍聴があり、都道府県教育委員会には別途映像が提供されている。視聴した教育関係者は、おおむね好意的に受け止めている。ただし、あくまで「総論賛成」だ。各論となる各教科等でWGに案が提示された時、現場に大きな衝撃を与えよう。実際には検定教科書が姿を現し、それに基づく授業改善が始まってからかもしれない。

 教育研究団体はWG等の本格化に向けて、準備を急ぐべきだ。WGが始まってからとか、案が出るのを待っていては既に勝負がついていることだろう。提言するには、もう遅いぐらいかもしれない。会員数の減少や現場の多忙化による弱体化もあろうが、ボトムアップの教育改革を進めるためにも奮起が期待される。

 ところで今回の検討体制について、若干の指摘をしておきたい。前回改訂では、教科等を部会でなくWGに「格下げ」したのが特徴だった。今回もそれを踏襲しただけでなく、学校種別の部会は幼児教育WGや義務教育・高等学校の両検討チームに編入され、「部会」と名が付くのは両チームの上部会議体である「総則・評価特別部会」だけになった。

 教科等横断の特別チームがなくなった一方、不登校と特異な才能で二つのWGが設置されたのも今回の特徴だ。「家庭」と「情報・技術」のWGが設置されたのも、中学校技術・家庭科の分離が既定路線化したことを示している。今回も企特部会を司令塔として、前回以上に議論が急速に進んでいくことだろう。そう受け止めて、今後の議論を見ていく必要がある。

 

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2025年7月 3日 (木)

【池上鐘音】かっこいい除籍

▼早稲田大学といえば世間でも中退が評価される稀有な存在だが、早大中退に匹敵するのは「横浜国大除籍」だと密かに信じている▼早大に比べれば有名出身者の数で落ちるものの、作家の高橋源一郎・明治学院大学名誉教授や映画監督の阪本順治氏を挙げたら理解してもらえようか。小子の学生時代からヒーローだった阪本さんは、教育学科の5年先輩でもある▼もっとも周囲には、ろくでもない除籍者や予備軍がゴロゴロいた。要するに学内活動のために学籍を得ただけで、もちろん文化人にでもなる以外に世間から評価されることもない▼早稲田の出身者は中退も除籍も混同して使っているようだが、中退は当局で正式に手続きをして取得単位は残る。対して除籍は学則にもよろうが、年度内に授業料を払わなければ自動的に処分となり単位も消滅する。2留で卒業を決めた際に周囲から「8年いろ」と糾弾されたものだが、中退や除籍以外に「学籍期間満了」というものがあることは掲示板で知った▼伊東市の田久保真紀市長が、学歴詐称疑惑に揺れている。除籍を「卒業」と偽っていたが、5月に当選したばかりの当人は辞職を否定している▼伊東市といえば、伊東温泉競輪の施行者でもある。市長が大学を卒業していないとしても、むしろファンは親近感を抱くだろう。学生時代に自由奔放な生活をしていたと自任するなら、なおさら堂々と名乗ってほしい。横国には劣るが「東洋大除籍」、なかなかいい響きではないか。

 

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