次期指導要領「専門部会等」(4) 教育課程の「2階」部分 平屋じゃ駄目なのか
12日に開催された中央教育審議会の教育課程部会「特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ(WG)」第4回会合を傍聴していて、ふと疑問が浮かんだ。これは果たして、学習指導要領の改訂論議ですべき話なのかと。
次期指導要領では「多様性の包摂」を基本的方向性の一つに掲げる。そのため学校として編成する「1階」の教育課程を柔軟化する一方、個々の児童生徒に着目した特例を新設・拡充して「2階」を設ける。しかも可能な限り、1階で包摂することを目指すという。
そうした提起のあった教育課程企画特別部会(企特部会)を、うなずきながら聞いていた。これなら不登校や通級だけでなく、外国ルーツの子や特異な才能(特才)のある子も含め「誰一人取り残さない」教育課程が実現すると思ったからだ。
企特部会の論点整理と前後して始まった「各教科等の専門部会等」では、教科等以外に「不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG」と特才WGを特出しして設置し2階部分の特例を検討してきた。実は先の疑問は、不登校WGでも感じていた。
特才WGでは、対象実施機関を当面は上位学校種や大学等、公的研究機関、社会教育施設、公的な法人に限ってスタート。具体的な留意点は「運用の手引き」で示し、事例が積み重なれば随時改善を図りたいという。上位学校種として「高等学校等」が明示されたのは、画期的でもある。
しかし手引きでは活動場所や指導者、移動時間も含めた出席扱いなど細かく規定するという。議論でも、活動状況の報告など実施団体との連携が重要だという声が相次いだ。確かに在籍校が責任を持って指導要録に記録するには必要なことで、学校側の現実的な要望にも沿ったものだろう。しかし徹頭徹尾、教育課程のサプライサイド(供給側)の都合だ。デマンドサイド(需要側)である子どもたちのニーズは、あくまで「特例」を考慮される客体でしかない。
サプライサイド行政からデマンドサイド行政への転換を提言したのは内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」(2022年6月)だが、仕掛け人は出向中の合田哲雄・現文科省高等教育局長だった。次期改訂は「合田路線」修正の上に成り立っていると言えなくもない。
もちろん、指導要領に何も規定しなくていいと主張するつもりはない。しかし、たった一言でいいのではないか。教育課程は、児童生徒の最善の利益を図ることを第一にして柔軟に適用すると。どう適用するかの判断は、高度専門職のトップリーダーたる校長が最終判断すればいい。そうすれば、すべて「平屋」で包摂できる。
ナショナル・カリキュラムである指導要領は、あくまで「意図されたカリキュラム」だ。もともと学校が編成する「実施されたカリキュラム」とはギャップがあるし、ましてや児童生徒の「達成されたカリキュラム」とは違う。教育課程政策として、前二つのカリキュラムと後者を区別して捉える時が来ているのではないか。その点で、合田局長の持論である指導要領の「教育プログラム」化は再考に値する。
公教育の実施義務を厳密に課すことは、近代国家に不可欠だ。しかし権利主体である子どもがどのような教育と成長を選び取るかは、もっと柔軟でいいのではないか。もちろん保護者には普通教育を受けさせる義務を規定した、憲法に基づいてのことである。次期改訂が「試案」段階の理念に立ち返ろうという意図を含んでいるとすれば、なおさらである。
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