次期指導要領「専門部会等」(7) 文科省事務局内の意思統一に疑問
次期学習指導要領の改訂方針が、文部科学省事務局内ですら意思統一が徹底されていないのではないか――。そんな疑いを抱かせる一端が、20日にあった。中央教育審議会教育課程部会に17ある教科等ワーキンググループ(WG)でおそらく最も注目が低いであろう、産業教育WGでだ。
当日配布資料の中に「専門高校における実践的・探究的な学び(イメージ)」と題するポンチ絵(概念図)がある。産業界との連携・協働による理論と実践の往還によって、生きて働く知識・技能(知・技)や未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等(思・判・表)を育成して「社会を支え産業の発展を担う職業人」へと育っていくイメージだ。
その右側で個別の知・技や思・判・表が「統合的な理解」「総合的な発揮」に昇華していくような図示を、企特部会委員でもある溝上慎一・桐蔭横浜大学教授が問題視した。「こういう理解では次期指導要領の新しさは何もない。(担当の産業教育振興室は)教育課程企画室と擦り合わせてはどうか」と苦言を呈したのだ。
これを産振室の事務官や教科調査官だけの「勘違い」とみてよいのだろうか。教育課程課の調査官にも同じような誤解が広がっているとしたら、深刻な問題だ。というのも各WGが親部会の教育課程企画特別部会(企特部会)に報告した目標や高次の資質・能力(中核的な概念等)の「たたき台の暫定的な整理」、というよりその原案を作成した調査官が本当に改訂趣旨を理解しているのか前々から疑問に思っていた。
そうでなければ、7項目から成る「検討の方向性」を了承した2日の企特部会が「スリムで骨太な記載」(当日の委員発言を基に追加した「留意すべきポイント」)を求めるはずはない。つまり調査官の多くが、現行指導要領のイメージを引きずり過ぎているということだ。
改めて確認しておこう。2024年12月の諮問にもあった中核的概念はビッグアイデアなどとも呼ばれ、国際的にもコンピテンシー(資質・能力)ベースのカリキュラム改革で重視されている。アンドレアス・シュライヒャー経済協力開発機構(OECD)教育・スキル局長の言を借りれば「科学者や歴史家のように考える」ことだ。
ビッグアイデアの下で、個別の内容は「イグザンプル(例)」(教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授)でしかない。だからこそ入れ替え可能になるのだし、デジタル学習基盤の下では学習者がコンテンツを与えられるだけでなく自分から「取りに行く」ことも容易だ。だからこそ“less is more”(少なく教えて豊かに学ぶ)が成立する。
2日以降に開催されたWGでは、個別の学習内容に向けた議論に入ったところも少なくない。それでも高次の資質・能力の修正案が示されたWGを見る限り、微調整ばかりで中核的概念に値するような骨太案には程遠い。これでは「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)問題に対応するための、内容や教科書の大胆な精選アイデアが出ようはずもない。
今回の改訂論議は諮問以来、現行指導要領の資質・能力育成が「道半ば」だとの認識に立ってきた。このままでは次期指導要領も、道半ばに終始するのではないか。今からそんな恐れを抱くのは、無用の心配に過ぎようか。
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