次期指導要領「専門部会等」(6) 議論自体も「道半ば」だ
中央教育審議会教育課程部会「各教科等の専門部会等」の〝親部会〟である教育課程企画特別部会(企特部会)が2月2日に開催され、総則・評価特別部会(総則部会)と14のワーキンググループ(WG)から報告を受けた。これに基づき7項目にわたる検討事項を、文部科学省事務局が提案。それに沿って順次、各WGで「精査」が行われる。
検討事項の指摘自体は、いちいちもっともである。というより各WGで、なぜ最初からこの方向で議論ができなかったのか。ひとえに事務局の準備不足と言わねばならない。
今次改訂でも10年前と同様、諮問前の準備作業として「有識者会議」方式が採られた。「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」(主査の天笠茂・千葉大学名誉教授来)、いわゆる天笠検討会だ。期間は2022年12月から24年9月。最後はバタバタとまとめた印象が拭えないが、12月末の諮問に主要事項はほぼ盛り込めた。
この1年9カ月間に、並行して各教科等の内容を水面下で検討する余地は十分あったはずだ。しかし、そんな動きは一切聞こえてこなかった。まずは基本方針が決まってから、というのは建前としてはそうだろう。そうはいっても、教科調査官レベルで内々に議論することは可能だったのではないか。
実際、文科省教育課程課編集の『中等教育資料』では教科等の枠を超えた企画が組まれてきた。それでも調査官レベルで、基本的な意識改革さえできていなかったと見なければならない。そうでなければ各WGで、従来の指導要領の発想にとらわれた事務局原案が出てくるわけがない。
その結果、WG委員も従来の枠内でしか意見が出てこなかった。「端的に」記述するという総則部会の方針も効かず、本文に書き込めないとなれば「解説で丁寧に」という意見であふれた。指導要領や解説の記述ぶりで実践が差配できるという発想のままでは、現場の自律性・創造性が発揮される大綱的基準としての指導要領などできるわけがない。
教科等だけではない。「中核的な概念」を巡る混迷も、そうだ。検討事項では、総則部会が言い換えた「高次の資質・能力」という用語を検討・議論の「足場」としては今後も使うものの告示文では使わず、知識・技能に関する「統合的な理解」と思考力・判断力・表現力等の「総合的な発揮」だけにするよう提案している。
確かにWGで、高次の資質・能力という用語に懸念が続出したのは確かだ。しかし、それは「『高次』と言われても、よく分からない」といった「低」レベルの議論だった。せっかく学術に由来する中核的概念を、現場になじみのある言葉に言い換えた結果がこれである。教員養成部会では教職を「高度専門職」に位置付けるべきだとの議論が続いているが、高度専門職の議論とは思えない議論が多くのWGで交わされていた。
事務局資料では、各WGの検討ポイントが1枚紙にまとめられていて大変便利である。そのうち社会・地理歴史・公民、算数・数学、理科の各WGに「批判的」という言葉が注釈なしに出ている。実際のWGでは「批判」という言葉が、現場の誤解を招くとして不使用や言い換えを求める意見も根強かった。クリティカル・シンキングを理解しようともしないで、何が高度専門職か。「経験の浅い教師が増えている」というのは、言い訳にもならない。
要するに企特部会の「高度」な議論が、委員間に何も浸透していないのだ。議論のアーカイブ動画で「行間まで読んで」(企特部会主査の貞広斎子・千葉大学副学長)もらった結果が、これである。なるほど従来型の記述に拘泥するのも当然で、ましてや「見方・考え方」の位置付けが変わったことも理解しようがない。
もっとも事務局の整理や説明が悪かった部分が、多分にあろう。その点、企特部会の議論で貞広主査から最初に指名された奈須正裕・教育課程部会長(上智大学教授)の発言が簡潔かつ意味深長で、しかも非常に分かりやすかった。別に【資料】として発言の起こしを掲載したので参照されたい。今次改訂で行おうとしているのは、そういうことなのだ。諮問は現行指導要領が「道半ば」だというが、次期指導要領まで「道半ば」にしないための議論が早急に求められる。
↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます
| 固定リンク
「社説」カテゴリの記事
- 次期指導要領「専門部会等」(7) 文科省事務局内の意思統一に疑問(2026.02.28)
- 次期指導要領「専門部会等」(6) 議論自体も「道半ば」だ(2026.02.05)
- 【資料】企特部会での奈須正裕・教育課程部会長発言(2026.02.05)
- 次期指導要領「専門部会等」(5) 道徳科の現行維持とは驚いた(2026.01.21)

コメント