処遇改善より定数改善を優先すべきだ
自民党の特命委員会が、公立学校教員の処遇改善を検討している。教員不足や採用試験倍率低下の問題が、給特法(教職給与特別法)に特化されているかのような情勢だ。
文部科学省の検討会も昨年末に発足しているが、明らかに与党の様子見で会合をころがしている状態にとどまっている。2022年度の教員勤務実態調査の速報値公表が5月にずれ込むというのも、単なる事務作業の遅れなのかといぶかしんでしまう。
処遇改善を否定するわけではない。本来1兆円にも値するタダ働きをさせている状況は、いかにも違法状態である。ただ財源に限りがある中では、中途半端になりはしまいか
特命委では、業務や能力に応じた待遇という話も出ている。思い起こされるのが、東京都教委の成績率導入だ。それによって教員の士気が上がったと言えるだろうか。そもそも副校長どころか主幹教委のなり手も少なくなっているのは、どういいうわけか。そもそも今どき給与が高いから教員を選んでいるという人が、どれほどいるだろう。
給特法を廃止すべきだという声も強まっている。一般論として、残業抑制の効果を期待するのは分からないでもない。しかし、これからは教育の質をますます上げなければならない時代である。今こそ教員の自発性、創造性発揮が期待される時はなかろう。
もちろん、部活動指導をはじめとして半ば職務命令になっている違法状態は一刻も早く解消されなければならない。だからといって現実的な改革が難しいのも、部活の地域移行を見れば明らかだ。
防衛費はもとより福祉や子ども予算をめぐる政府・与党の財源論が迷走する中で、大胆な教育支出の拡充も期待できまい。一方で、定額働かせ放題で多忙化している教員の問題が社会的にも注目を集めている状況は好機だ。
そうした中で財源を有効に活用するためには、何よりも定数改善を優先すべきではないか。人が増えれば、それだけ負担も軽減されるのは明らかだ。というより20年も定数改善を放置してきたことが、現下の過酷な勤務実態を生んできた最大の要因ではなかったか。
具体的に定数の何を改善すべきか、さらには養成・採用の問題をどうするかは別に論じたい。まずは与党や世間の関心が給特法の在り方に集中しつつある中、改革論議が的外れな方向に流れないよう強く訴える。
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